コラム

第41回 闘う弁護士の不動産投資小話~兵法㉖

小規模開発は自分でやるのが得策

等価交換では地主への還元少なく

 

 先日、私の所有している港区六本木の土地について、あるデベロッパーから連絡があり、「近隣一帯の土地について、分譲マンション開発のご提案で各所有者へ架電している。土地は買い上げではなく、等価交換による精算でお願いしたい」との申し出がありました。

 

 等価交換とは、土地所有者が土地を提供し、デベロッパーがその土地の上に建物を建てて、建物完成後に両者で土地と建物を交換し合い、最終的に土地所有者とデベロッパーの共同所有あるいは区分所有で建物を所有する形態の事業です。デベロッパーは、等価交換事業でオフィスビルを建築する場合は、オフィスビルを賃貸し、分譲マンションを建築する場合は、分譲マンションを売却して利益を得ます。

 

 一般に、等価交換事業は、建物を建築する主体がプロのデベロッパーであることが多いため、安心して事業を任せることができるというメリットがあります。一方で、建物完成後、建物の床をどれだけ所有できるかは専門的な知識を必要とするため、任せきりにしてしまうと土地所有者が損をしてしまうこともあります。

 

 デベロッパーの利益は建築費の20%程度は見込まれていますし、加えて、デベロッパーは、土地の評価額を低く算定しつつ、建築費を高く見積もりますので、土地所有者の還元床面積(土地所有者が最終的に保有する賃貸可能な床面積)が減る傾向にあります。

 

 この点、規模の大きくない開発地域では、建築費を負担できる信用や現金がある土地所有者にとっては、等価交換は拒否した方がよいです。私も拒絶しました。バブル崩壊後の金利が高くデフレ基調の時期には、借り入れせずに事業ができる等価交換はかなり重宝される時代がありました。ところが、ここ数年は金利も低く、インフレ基調であるために、借り入れのリスクはかなり低減されています。

 

 ただし、近隣の土地所有者の意見をまとめる必要がある規模であったり、自身の所有する建物に賃借人が残っていて、立ち退きの交渉を要するような場合は、プロのデベロッパーの話に乗るのも一つの選択肢です。

 

(次回に続く)

 

全国賃貸住宅新聞   2018年11月5日号

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