建物が老朽化していることはどのように評価されるか?

Q 建物が老朽化していることはどのように評価されるか?

A 耐震性に問題があれば、他の要素と相まって正当事由が認められている。

 賃貸マンションやアパートが老朽化した場合、通常、オーナーとして『建替え』を考えます。「今にも倒壊しそう」という状態ではなくても、大地震で損壊が生じるというリスクはあります。万一入居者に怪我等が発生した場、深刻な責任問題にもなります。オーナーとしては早めに建て替えや補強工事を行いたいというニーズがあるのです。

 この点、単なる老朽化ではオーナーのこれまでのメンテナンスの不行き届きが指摘されることもあり、正当事由としては認められない場合もあるでしょう。問題は耐震診断をし、強度不足となった場合です。この場合も建替えでなく、耐震補強で十分と判断されれば正当事由は認められなくなります。裁判例では、耐震補強にかかる費用と建替えた場合の建築費を比較することが多いです。

 参考になる裁判例として、東京地方裁判所立川支部の平成25年3月28日判決(いわゆる高幡台団地訴訟)があります。対象となった物件は、東京都日野市にある地上11階建て、総戸数250戸の賃貸住宅です。原告である独立行政法人・都市再生機構(UR)は耐震調査で強度不足が発覚し、初めは耐震改修を検討していました。しかし「改修費用が過大であること」「改修を行っても機能性や使用価値を大きく損なうこと」との判断から、取り壊しを決めました。そして、退去期限とした日の2年前に住民に事前説明をし、2年間は入居者の引っ越し先の斡旋や引っ越し費用を負担しつつ、204世帯のうち197世帯は移転が完了しました。しかし、残り7世帯は補強工事による耐震化を求め入居を続けていたことから、URが2011年に提訴したのです。判決理由は「どのような方法で耐震改修を行うべきかは、基本的に建物の所有者である賃貸人が決定すべき事項である」とし、「その判断過程に著しい誤びゅう(誤り)や裁量の逸脱がなく、賃貸人に対する相応の代償措置が取られている限りは、賃貸人の判断が尊重されてしかるべき」としました。要するに、耐震補強で済ませるのか建替えをするのかは、基本的にその判断はオーナーがすべきであり、その判断が著しく間違っていなければ正当事由となるとされたのです。ただし、この判決では、代償措置、つまり立ち退き料は「退去に伴う経済的負担などに十分に配慮した手厚いものと評価できる」内容で、正当事由が補完されると述べられていますので、耐震性のみで正当事由が肯定されたわけではないことに注意です。あくまで、耐震性の問題は、他の要素と相まって判断される1つの事情と言えます。