賃借人に債務不履行が発生、すぐに解除できないか?

 本ページでは、賃借人に債務不履行事由があった場合に、事前の催告(このまま債務不履行が解消されない場合は契約解除するという警告)が必要かについて解説します。賃借人に債務不履行があった場合で、かつ催告不要であれば、物件を建替えたいオーナーは賃借人に立退きのお願いをする必要はなく、有無を言わせずに賃貸借契約を解除して明渡しを求めることができるのです。

 賃借人に債務不履行があった場合、民法541条で法定解除できますが、原則として、解除する前に相手方に対する上記催告が必要です(例外として民法612条2項による無断転貸等解除の場合は催告不要)。

 ところが、例えば賃借人が賃料を3か月分滞納しているので、賃貸人が契約解除しようとして、この催告をしたところ、賃借人が慌てて全額を支払ってきた場合は、債務不履行状態が解消されますので、もはや解除できなくなります。言葉は悪いですが、せっかく解除して立退きを強制できるチャンスがあったにもかかわらず、そのチャンスを逃すことになります。

 そこで,実務では,賃貸借契約に際して無催告解除特約が付されるのが一般的です。

 もっとも,賃貸借契約は当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約ですから、裁判所はこれを修正します。つまり、無催告解除特約がある場合でも,当然に無催告解除できるわけではなく,「契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合」でなければならないとしているのです。

 他方で、無催告解除特約が無い場合には,催告なしで解除することは全くできないようにも思われます。しかし、裁判所は、無催告解除特約が無い場合でも「信頼関係を裏切つて,賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為」があった場合には,無催告で解除できると、ここでも修正しているのです。

 裁判所は、賃貸人と賃借人の双方の利益のバランスを図っているのですが、いずれにせよ、無催告解除特約がある場合の方が、無催告で解除できる可能性が高くなります。ただし、何でもかんでも無催告で解除できると定めておくと、その解除条項自体が無効となるリスクがあります。実際に契約書を作成する際は弁護士までご相談ください。