外国人にも貸し出して賃料を上げたい

 本ページでは、建物賃貸借契約において、利回りを上げるという視点で、外国人との契約をどう取り扱うかという点について、検証してみます。

 

 日本における在留外国人数は、増加の一途を辿っており、平成28年末時点で238万2822人に達しています。こうした中、外国人の入居者を受け入れることができれば、空室率を下げるための対策の1つになり得ます。

 ところが、外国人入居者の場合は、その出身国と日本との生活様式や法律等の違いにより、さまざまなトラブルが想定されるという問題があります。

 そこで、外国人入居者を受け入れる場合には、賃貸借契約の各段階において、下記の点について特に意識していただく必要があります。

① 契約準備と申込み → 重要事項説明、身元確認、連帯保証人

② 契約から入居 → 賃貸借標準契約書の外国語翻訳、定期借家契約、暮らしの説明

③ 解約から退去 → 解約手続、敷金、原状回復義務

 まず、①については、外国人入居者の要望に応じた取扱い物件の有無を案内することが必要になります。たとえば、日本での滞在経験のない外国人入居者の場合は、希望する賃料額が希望物件の周辺地域の賃料相場とかけ離れていることがあります。このような場合には、周辺地域の賃料相場の一覧を示すなど、提示した賃料額が妥当であることを納得してもらえるようにすることが必要となります。また、外国人入居者の出身国の生活様式と日本のそれとは異なる点がたくさんあり得るため、賃料だけではなく、たとえば周辺の物価や通勤・通学の交通費等も併せて、外国人入居者の経済力との兼ね合いを考慮するようにアドバイスすることが望まれます。このような説明や話し合いを行わずに、賃料以外の費用がかさんでしまった場合、結局賃料の支払いが滞ってしまうという事態になりかねないからです。

 一方、このような説明を日本語で行う場合には、賃料等の金額の数字については特に誤解が生じないように、筆談を用いるなどして本当に理解しているか確認しながら説明しましょう。また、入居相談時の案内内容を書面に残すなど、外国人入居者との間で、契約条件等についての認識の相違が生じないようにする対策が求められます。

 この他、外国の賃貸借契約と日本のそれでは異なる要式がたくさんあり得るため、部屋を案内する前に、日本の賃貸借契約の重要事項について説明します。たとえば、日本の賃貸借契約では連帯保証人が必要となることや、敷金という制度があることなどを説明することにより、契約時に必要な書類や金銭の準備などをあらかじめ外国人入居者に認識させて、その後の手続きが円滑に進むようにする配慮も重要です。

 その後、外国人入居者が希望する部屋が決まった場合には、申込みとなりますが、この段階では、入居審査のための必要事項について確認する必要があります。必要事項の確認のために書類の取寄せが必要になる場合もありますが、場合によってはそのような手続きをとらせる申込みによって、部屋が借りられることになったという誤解をされないように注意してください。申込みはあくまで部屋を借りたいという意思表示であり、書類審査等が通り、かつ、賃貸人の承諾を得られなければ部屋を借りることが出来ないことを事前にきちんと伝える必要があります。

 必要事項としては、たとえば、身元確認書類が必要となりますが、入居審査における身元確認書類の例としては、パスポート・外国人登録原票記載事項証明書・勤務証明書・在学証明書・収入証明書・就労資格証明書・資格外活動許可書などが考えられます。入居希望者の滞在目的に応じて、準備してもらう身元確認書類の呈示を求めましょう。

 また、通常は連帯保証人が必要となりますが、外国では賃貸借契約において連帯保証人を必要としないで、賃料滞納等の契約違反があれば、直ちに賃借人に退去を求めることができる国もあることから、連帯保証人という制度をあらかじめ説明する必要があります。しかし、外国人入居者には適切な連帯保証人が見つからない場合も少なくありません。その場合には、民間の家賃債務保証サービスの利用の検討が必要となるでしょう。

 

 次に、②についてですが、賃貸借契約書は日本語の契約書を用いるものの、契約内容等について事前説明を十分に行う必要があり、その説明に際しては賃貸住宅標準契約書の外国語翻訳を申込者に参照させながら説明することが望ましいでしょう。また、注意事項等は口頭の説明だけではなく、できる限り契約書に特約事項として加えましょう。さらに、賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約がありますが、滞在期間があらかじめわかっているような場合はもちろん、そうでない場合でも、定期借家契約にすることによって、賃料滞納、用法遵守義務違反等による損失発生のリスクを最小限度に抑えることが考えられます。

 入居後には、日本の生活様式や文化に慣れない外国人入居者に対し、その地域の暮らしに関する情報の提供が必須です。外国人が入居したことによって、他の部屋の賃借人や近隣住民に迷惑がかかり、結果的に空室が増えたのでは本末転倒です。地域の暮らしに関する外国語版の手引き書は、一部の公的機関や、多くの自治体で提供されているので活用するとよいでしょう。

 

 最後に、③のポイントとしては(1)解約予告期間、(2)書面による解約手続、(3)敷金の精算方法、(4)原状回復義務が挙げられます。これらの点について事前に十分な説明をすることはもちろん、トラブルが生じた場合に備えて、外国人入居者が退去する際の国内外の転居先や帰国先等、外国人入居者と確実に連絡がとれる連絡先等については、事前に必ず確認しましょう。