賃借人の中途解約を阻止できるか?

 投資目的でビルを一棟保有する場合、常に満室経営できるに越したことはありません。そして、中小規模のビルの場合、1つのテナントに一棟貸しするケースもありますが(一棟貸しする方が、小分けして貸すよりも賃料を高く貸せるケースもあります)、その場合は、そのテナントが借りてくれている間は満室ですが、仮に退去すれば1円も賃料が入ってこないということになります。このような空室リスクを排除するためには、期間内解約をした場合の違約金の特約が有効です。具体的には、「借主が本契約を期間満了前に中途解約する場合、借主は貸主に対し、本契約が中途解約により終了した日の翌日から契約期間満了日までの賃料相当額を違約金として支払わなければならない」などと規定します。

 ただし、賃貸借契約が途中で解約されて、実際に賃借人が使用収益していないにもかかわらず、あまりに長期の賃料相当額が違約金として請求されるのは、賃借人の解約の自由を制限することになりかねません。そこで、判例でも、「賃料等の約3年2月分の違約金が請求できる条項は、賃借人に著しく不利であり、・・・明渡した日の翌日から1年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効と解する」(東京地裁平成8年8月22日判決)として、特約の効力を一部否定しています。

 では、そもそも中途解約条項を設けない契約であれば、賃借人からの契約期間中の解約はできないのが原則ですので、契約期間中の賃料収入を確保できるのでしょうか。これについては、定期借家契約について、床面積200㎡未満の居住用の建物について、借主が「転勤・療養・親族の介護」等のやむを得ない事情によってその契約を維持する事が困難な場合には、中途解約の申し入れができることになっています。裏を返せば、定期借家契約で事業用建物や200㎡以上の居住用建物を賃貸する場合に、中途解約条項を設けなければ、賃貸人の契約期間中の賃料収入への期待は保護されることになります。